スクリーンプリントとは? プラスチゾルインクのメリット・デメリットと持ち込みプリント
今回の作例は町田で福祉分野の地域プロジェクトを行う「ウォームブルーまちだ実行委員会」トートバッグ制作と個人でアイテムを持ち込みで依頼いただいたオリジナルグッズ制作事例です。ともに「スクリーンプリント」加工で制作しました。
衣類のプリントの王道といえばご存じ「スクリーンプリント(シルクプリント)」です。スクリーンプリントは「版を通してインクを押し出す」プリント方法ですが基本構造は100年以上ほぼ同じです。第二次世界大戦後のアメリカでプリントTシャツ文化が広まりました。1960年代には、アメリカのポップアートを代表するアーティスト「アンディ・ウォーホル」がシルクスクリーンを作品制作に取り入れてアート表現としても確立。アパレル製品の量産に使われる標準的なプリント方法になります。
プリントに使うインクですが大きく分けて「水性インク」と一般的に油性と呼ばれる「プラスチゾルインク」のふたつがあります。Factory antでは油性インクの「プラスチゾルインク」を主に使っています。主成分はPVC(ポリ塩化ビニル樹脂)で、常温では乾かず約160℃前後で加熱することで硬化(定着)します。まさに「プラスチック」です。熱で硬化する「プラスチゾルインク」は発色が鮮やかで、ブラックやネイビー、ブラウンなどの濃色ボディにもくっきりと色が乗るのが特徴です。プリント作業中でも乾燥しにくいので版の目詰まりが起きにくく、細かいデザインのかすれも起こりにくいです。インクの種類も多く、メタリックや蛍光色から、ひと手間かけた立体的な表現ができるパフやハイデンシティなどちょっと変わったプリント方法も可能です。やや厚みのあるインクが生地の上に「乗る」質感に仕上がります。
逆に「プラスチゾルインク」の欠点は仕上げに熱をかける必要があるので、熱に弱い素材の縮みやポリエステル素材などでは、加熱時に生地の染料がインク側へ移る「ブリード(色移り)」と呼ばれる現象が起こる場合があります。衣類メーカーやインクメーカーがいろいろと対策を施していますが、素材やボディの染料、下地処理の有無によっては色移りが起きることがあります。Factory antではこのプラスチゾルインクでデザインの再現性と耐久性の高いプリントをお届けしています。
加熱することで「硬化」するプラスチゾルインク
立体表現の「ハイデンシティ」や写真のような「網点分解」など幅広い表現ができるのもスクリーンプリントの特徴
CASE 01
「ウォームブルーまちだ実行委員会」トートバッグ
「町田を青く染める」をテーマに活動している「ウォームブルーまちだ実行委員会」のトートバッグの製作です。ベース素材には、耐久性と質感に定評のあるUnited Athle(ユナイテッドアスレ)のキャンバス生地トートを使用しました。
パレットはとても大事。今回のトートバッグ専用に自作
まずはじめにバッグをプリント機に固定するための「パレット(治具)」選び。トートバッグはTシャツやパーカーなどの衣類と違って、縦横のサイズやマチの有無でセットするパレットにうまくはまらないことがよくあります。今回はメーカー標準のパレットだとトートバッグがうまくはまらなかったので、5mm厚のアクリル板をレーザー加工機で切り出してこのバッグに合わせた専用パレットを自作。うまくはまらず強引にセットするとその後の作業が雑になってミスプリントの原因にもなるのでちゃんとした前準備が大切です。
この自作パレットにプリントするトートバッグをセットしてプリント位置を決めます。どの位置が収まりがいいかなど、現物で確認します。意外とアナログな作業での確認が必要です。今回は上部の縫い目から50mm下がった位置に設定しました。
版の穴あきチェックをしてから本番プリント
製版を行った後、プリント機へセットします。ここで欠かせないのが「検版作業」版の裏側から光を透過させて覗きます。デザイン以外の箇所に、意図しない微細な穴(ピンホール)がないかをチェック。穴があるとそこからもインクが漏れてトートバッグを汚してしまうので穴を見つけたら乳剤やマスキングテープで穴を塞ぎます。
インクの色はウォームブルーのイメージに近い「プロセスブルー」を選択。トートバッグに刷る前に、まずは専用のテスト用紙で版の抜け具合とプリントされる位置を確認します。プリントに使用するのは「プラスチゾルインク」。このプラスチゾルインクは自然乾燥では定着せず、160度前後の熱を加えることで硬化します。プリント直後にコンベアーオーブンに通して設定した温度で確実に熱処理をします。じっくりとコンベアーオーブンで設定した温度まで上げて確実に硬化させれば「ウォームブルーまちだ実行委員会」トートバッグの完成です。
CASE 02
「dorakonman」さん持ち込み複数アイテムのプリント
「持ち込みでプリントできますか?」というお問い合わせをよくいただきます。Factory antでは条件に了解いただければ持ち込みアイテムにプリントすることも可能です。条件のひとつ目は「持ち込んでいただいた数を納品できない場合がある」ということです。慎重に作業をすすめますが、ミスプリントのリスクはゼロではありません。プリントがかすれたり予想外のトラブルでミスプリントが出た場合に、ちゃんと仕上がったアイテムを持ち込まれた数だけ渡せない可能性があります。なので「1品もの」や「必要な数ぴったり」の持ち込みなどは少し心配です。予備を含めた準備をお願いしています。もうひとつは別途「持ち込み手数料」を持ち込みアイテムの数分頂戴しています。素材を持ち込みでプリントしたい場合もお気軽にご相談ください。
そんな持ち込み条件を了解いただいた今回の製作アイテムはゴルフ大好き❤ ドラコン挑戦中のdorakonmanさんの持ち込みアイテムにスクリーンプリント加工です。今回プリントするアイテムは、コットンとポリエステルのTシャツ、コットンのパーカーという構成。「DORAKONMAN」のデザインを背中にプリント。パーカーにはフードがあるので、Tシャツと同じ位置にプリントするとフードが重なってデザインが隠れてしまうからTシャツとパーカーで現物合わせして、プリント位置を決めてミスの防止にプリント位置を仕様書へ記録します。仕様書をチェックしながらプリント作業を進めます。今回のプリント色は「GSIクレオス ステラターコイズ」と同じ色をリクエストいただいたので、インクを調色して希望の色を作りました。
感光乳剤を露光してオリジナルデザインの製版作業
製版作業もファクトリーで行います。デザインデータを透明なフィルムに出力して「#120メッシュ」のスクリーン版に感光乳剤を均一に塗って光の当たらない真っ暗なところで乾燥、保管します。Factory antでは専用の乾燥ラックに保存。このラックは中で空気を循環させて気温の低いときはヒーターの機能を使えばスクリーンの乾燥も早くとても便利。スクリーン版が乾いたら出力したフィルムと一緒に露光作業。ちなみに「露光」とはインクが“通るところ”と“通らないところ”を作る作業です。スクリーン版に塗った感光乳剤は「光(紫外線)が当たると固まる性質」を持っているので、透明なフィルムに黒く印刷されたデザインを重ねて光を当てると透明な部分は光が当たって固まり、黒く印刷された部分は光が遮られて固まりません。この性質を利用して版を作ります。露光したスクリーン版を水で洗い流して固まっていない感光乳剤を落とせば版の完成です。
リクエストいただいたぴったりの色を調色して再現
版の準備をしている間に「調色」作業。ファクトリーに準備してあるインクに無い色で調色が必要になる場合はカラーガイドである「PANTONE(パントン)」の数値をベースにインクを混ぜ合わせて作りますが、今回は「GSIクレオスステラターコイズ」というPANTONEカラーではない色をリクエストいただいたので、いちばん近い「PANTONEカラー」を見つけてさらに微調整をしてインクを作成。無事ほぼ「GSIクレオスステラターコイズ」同じ色が完成しました。
下地に負けないように重ね塗りで鮮やかな発色
スクリーン版と特製インクができあがればプリントの開始です。プリントされる位置を確認して、テストプリントを終えたら本番作業の開始です。今回持ち込まれたアイテムは濃い色のボディが多く、今回使うような明るいプリント色は隠蔽性が弱いこともあるので下の生地の色に干渉されないように2度塗りでプリントします。1度プリントして「スポット」と呼ばれる仮乾燥機で乾燥させてさらに上塗り。Tシャツもパーカーもじっくりとコンベアーオーブンで確実にプラスチゾルインクを硬化させれば、こだわりの色を再現したお気に入りアイテムの完成です。
この記事を読んで、どんな「作りたい」が浮かびましたか?
「こんなリメイク自分もやってみたい」「AIで出したこの画像プリントできる?」など、あなたの素直な感想やアイデアを、ぜひ公式LINEから聴かせてください!