「スクリーンプリント」は安くてシンプルなだけのプリント?──いえいえ、実はけっこう奥が深いんです
Factory antで運営するアパレルブランド「SANAGARA」から、新作アイテムを近くリリース予定です。新作アイテムの特徴は背面のロゴプリントです。かなり立体的な特徴的なテクスチャーに仕上げました。さらにランダムに独特の光沢感を出すために箔加工もしています。実はこの加工は「スクリーンプリント」で行っています。「スクリーンプリント」と聞くと、単色や数色程度のシンプルなプリントを想像する方が多いかもしれません。実際、Factory antにプリントのご相談をいただくときも「スクリーンプリントは1色の比較的安いプリント」と認識している方が多い印象です。実はスクリーンプリントにはもっといろいろな表現ができるのです。今回はその話をしてみたいと思います。
スクリーンプリントもひと手間かければとても立体的な表現も可能です。最終的にインクを調色してややオフホワイトの色味にしてキラキラに輝く箔加工で仕上げました
そもそもスクリーンプリントってどんなプリント?
スクリーンプリントは、メッシュ(網)を張った「版」にインクを載せて、スキージと呼ばれるヘラで押し出して素材に転写する方法です。仕組み自体はとてもシンプルです。「シルクスクリーン」という名前を聞いたことがある方もいるかもしれません。もともとメッシュに本物の絹(シルク)を使っていたのでそう呼ばれていましたが、今はポリエステルやナイロンのメッシュが主流なので「スクリーンプリント」と呼ぶのが一般的になっています。ちなみにこの技法、実は日本とのつながりが深いのです。もともと日本で古くから行われていた型紙を使った染色技法(友禅染や伊勢型紙など)がヨーロッパに伝わり、1907年にイギリスで特許が取得されたのがスクリーンプリントの始まりとされています。その後、1960年代にアンディ・ウォーホルがスクリーンプリントを使ったアート作品を次々と発表して、この技法は一気に世の中に知られるようになりました。あのキャンベルスープ缶やマリリン・モンローの作品は、まさにスクリーンプリントで作られたものです。
Tシャツだけじゃない。実はあらゆるものに使われています
スクリーンプリントというとTシャツのイメージが強いですが、「水と空気以外にはなんでも印刷できる」と言われるくらい、対応できる素材の幅が広いプリント方法です。身近なところだと、看板やステッカー、コップやグラス、車の計器類やスマートフォンの内部の基板にも、スクリーンプリントの技術が使われています。Factory antでもTシャツなどの衣類以外にもポリエチレン製の袋やバッグ、紙などいろいろな素材にスクリーンプリントをしています。なぜこれだけ幅広く使われているかというと、スクリーンプリントはインクの層が厚く、しっかり色が乗るから。下地の色に負けずに発色してくれるので、濃い色の素材にもはっきりとしたプリントができるんです。
シンプルなだけじゃない。こんな表現もできます
「1版1色」が基本のスクリーンプリントですが、インクや版の使い方次第で、いろいろな表現ができます。すべてのスクリーンプリントの方法を網羅しているわけではありませんがFactory antで加工した変わったスクリーンプリントの事例を紹介します。
ハイデンシティプリント(厚盛りプリント)
インクを何度も重ねて刷ることで、プリント面に厚みを持たせる加工です。立体的な存在感が出るので、ロゴやブランドネームを目立たせたいときに効果的です。SANAGARAの新作は何度もインクを積み重ねるハイデンシティとは加工方法が少し違いますが厚盛りプリントです。Cheeky antのアイテムでもハイデンシティプリントで仕上げたアイテムがあります。
堅いハイデンシティ用のインクを使用するので通常のプラスチゾルインクとは質感も少し変わっています
パフ(発泡プリント)
インクに「発泡剤」を混ぜて、熱をかけるとプリント面がふくらむ加工です。ハイデンシティとは違ったやわらかな立体感が特徴です。
ハイデンシティとは違った丸みをおびた立体感が特徴の「パフプリント」
多色プリント
スクリーンプリントは1つの版に1色が基本ですが、版を2枚、3枚と増やしていけば、その分だけ色を重ねることができます。色ごとに版を作るので、色の組み合わせがきっちり決まった仕上がりになるのが特長です。
分版・網点で写真のようなプリント
デザインデータを色ごとに分ける「分版」後、細かい網点に加工をすれば写真のようなグラデーションのある複雑な絵柄やデザインもスクリーンプリントで再現できます。白いTシャツなら分版はCMYKで。黒いTシャツならデザインによって分版する色が変わります。
色ごとに分版して網点化してスクリーンプリント。見た感じはインクジェットプリントのようですが手に取ると質感やインクの厚みはしっかりスクリーンプリントと分かります
1つの版でカラーバリエーション
同じ版でもインクの色を変えれば、まったく違う雰囲気のバリエーションが作れます。版を作り直す必要がないので、少量ずつ複数のカラー展開をしたいときにとても便利です。
ひとつの版でもインクの色を変えればひとつのデザインで複数のバリエーションがつくれます
グラデーション
ひとつの版に2色のインクをうまく配置してプリントすると自然なグラデーションを出すことができます。デジタルプリントとは違うインクがきれいに混ざり合う独特の風合いが魅力です。
蛍光インク
スクリーンプリント用の蛍光インクは、インクジェットでは出せない鮮やかな発色が特長です。目に飛び込んでくるような色味は蛍光インクならではの表現です。濃色ボディ用の隠蔽性のある蛍光インクもありますが、淡色ボディ用の透明ベースの蛍光インクに比べると発色が少し劣ります。
箔・フロッキー加工
インクの代わりに接着剤をスクリーンプリントし、その上に箔やフロッキーをのせてプレス機で圧着します。ゴールドやシルバーなど、インクでは出せない光沢感のある仕上がりになります。
スクリーンプリントで接着剤をプリントした後に箔やフロッキーのシートをプリント面に熱圧着して加工します。プリントとは少し違う風合いになります
立体+箔などの複合加工
SANAGARAの新作で使っているのがこの組み合わせです。ハイデンシティで立体感を作った上に箔を載せています。ただし、普通にプレス機で圧着すると立体が潰れてしまうので、通常の箔加工とは別の方法で定着させています。手間はかかりますが、立体感と箔の光沢が両立した仕上がりになります。
「こんなことできる?」から始まるプリント
スクリーンプリントは100年以上の歴史がある技法ですが、古くさくない表現もできるプリント方法として面白いところです。安くてシンプルなプリントもできるし、手間をかけたこだわりの加工もできる。その振り幅の広さが、スクリーンプリントの魅力だと思います。Factory antではデザインに合わせてプリント方法や加工を一緒に考えることもできますので、「こんなプリントってできる?」という段階からお気軽にご相談ください。
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